本日の見所
2015年6月29日(月曜日)に放送された『きょうの健康』は、メディカルジャーナル・遺伝性のがん?アンジェリーナ・ジョリーも決断した遺伝性のがんとは…
きょうの健康出演者一覧
【司会】 桜井洋子
【解説】 冨田尚裕(兵庫県医科大学教授)
女優アンジェリーナ・ジョリーが行った予防的切除
今日は、月に一回最新の医療情報を伝える「メディカルジャーナル」の回。
遺伝性の癌といえば、女優のアンジェリーナジョリーさんが、遺伝性の癌の家系である事を予想して2013年に両乳房を予防的切除、2015年には卵巣も予防的切除した事で話題となった。
遺伝性のがん患者は全国で5万人弱
兵庫医科大学教授 冨田直裕(日本家族性腫瘍学会理事長)先生がスタジオに出演し解説した。
冨田尚裕先生は、遺伝性の大腸癌が専門。
遺伝性の癌の方は日本全国で、2015年には98万人と言われていてそのうち5%が(5万人弱)が遺伝性の癌である事が知られている。
主な遺伝性のがん
- 遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(約5〜10%)⇒とても多い
- 大腸がん(家族性大腸がん腺腫症、リンチ症候群)(約5%)⇒とても多い
- 多発性内分泌腫瘍症、脳腫瘍(フォン・ヒッペル・リンドウ病)、皮膚がん(遺伝性黒色腫)、目のがん(網膜芽細胞腫)など
上記は、原因となる遺伝子が判明しているがん。基本的にはほぼ全ての臓器においてなんらかの遺伝性のがんはあるという。100年前からがんの遺伝については解っていた。
遺伝子解析の進歩とメカニズム
遺伝子解析の進歩によって、ここ数十年で「がん抑制遺伝子」の一つが異変を起こす事によってがんが発生するというメカニズムが解ってきた。
通常は父、母から遺伝子を受け継ぐが、がん抑制遺伝子は細胞ががんになるのを防ぐ役割をしているのに、遺伝性のがんの人は、生まれた時に最初から母方か父方のどちらかひとつのがん抑制遺伝子が壊れている。
そこに、紫外線や外部の環境要因喫煙・食べ物などが加わるとがん抑制遺伝子のもう一つも壊れてしまい、がんになりやすい身体となってしまう。
ただし、100%がんになるというわけではなく、
- 遺伝性乳がん・卵巣がん症候群は、60〜80%
- 大腸がん(家族性大腸腺腫症)は、ほぼ100%が発症
- 大腸がん(リンチ症候群)は、女性で30%〜52%が発症、男性で54%〜74%が発症
と言う統計が出ている。
100%ではないがかなりの高い確率で発症。
がんが遺伝する確率は50%で、子どもが二人居るとして二人とも遺伝する場合もあるし、発症しない場合もある。これは確率の問題。(発症するかもしれないし無いかもしれない)
家族性大腸腺腫症(遺伝性大腸がん)
家族性大腸腺腫症は、若い年齢で発症するのが特徴的。放置するとほぼ100%が大腸がんを発症する。
- 20〜50代で発症
- ほぼ100%大腸がんを発症
- 100個以上のポリープ(多い場合は千個〜一万個)
- 胃や十二指腸にポリープが出来る場合もある
内視鏡で見ると腸壁に多くのポリープができている為、見分ける事は比較的容易。治療は「大腸全摘(大腸を全て切除)」が基本となる。
10代後半から、大腸内視鏡検査を開始、ポリープが出来た時点で予防的にすべて切除するのが基本。
しかし、全摘すると「水様頻便(水分を吸収する大腸がなくなるため)」や「出産に悪影響」があるので、現在は臨床試験で大腸を取らずに数あるポリープをしっかり取る治療を行うところもある。(臨床試験として行っている医療機関があるので主治医に相談)
リンチ症候群(遺伝性大腸がん)とは?
患者数は、家族性大腸腺腫症よりも多い。
その多くが50歳未満で発症。同時期または異なる時期に2個以上のがんを発症。他の臓器に発症する事もあるが大腸が一番多い。「子宮、卵巣、胃、腎盂、尿管、小腸、脳、すい臓など」
症状が一般の大腸がんと似ているのでリンチ症候群による大腸がんと診断されないままになることが多い。家族の治療歴を聞いて遺伝によるものかそうでないかを見極める事が大切。
治療は一般の大腸がんと同じ。リンチ症候群は予防的切除はあまりしていない。
このがんにかかった家族がいる場合は20代、30代から定期的に精密検査をする事が重要。
遺伝性がんの特徴
どのような場合に自分が遺伝性がんであるか確認することは重要。
- 特に弱年でがんになったひとがいる
- 何回もがんになった人がいる
- 同じがんになった人が多く居る
遺伝性のがんが心配になったらどうするか?
- 遺伝カウンセリング外来
- 家族性腫瘍外来
などが認定遺伝カウンセラー、認定医師がいる大学病院、国立がんセンターがある。
遺伝子検査(血液検査)などをして自分が遺伝性がんなのか確定出来る。
日本HBOCコンソーシアムのホームページには、近くにある医療機関の情報が掲載されている。
ご年配の方でインターネットが閲覧できない場合は、かかりつけ病院で相談すれば、紹介して貰える。
遺伝子診断を共有するのはとても重要。プライベートな個人情報保護という観点で究極の個人情報だが、家族全員の共有情報としてオープンにしてなるべく早くがんの対処ができるようにするのが望ましいと冨田尚裕先生。
(きょうの健康8月号P.92に掲載)
次回は帯状疱疹
次回放送は「帯状疱疹」(まとめ製作中)
きょうの健康関連グッズ
☆今回の話題は「きょうの健康8月号」P.92に掲載。