yonta64のテレビ番組ブログ

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【動画基礎&歴史】「29.97fps」という謎のフレームレート…どのようにして半端な数が生まれたのか?



どのようにして「29.97fps」という端数が登場したのか?

Premiere Pro CCで動画を作っていると、「29.97fps」という半端な数のフレームレートが頻繁に登場します。なぜこのような数字になったのか…その理由を調べると、フィルム映画や白黒テレビの時代にたどり着きました。

PremiereProCCの動画のプロパティー内容。フレームレートが29.97fpsになっている

 

「fps(Frames Per Second)」とはどういう意味?

Premiere Proの画面。コマが再生される様子をキャプチャしたもの

「fps」とは、1秒間に何枚の絵(フレーム・コマ)が表示されるか?……という意味です。

 

「fps」は、「frames per second」の略。「フレームレート」とも呼ばれ、連続する画像が表示される頻度(1秒あたりのフレーム数)を指します。これは、映画やビデオカメラ、コンピュータアニメーションなどに適用されています。

 

下図の場合、1秒間に30コマの絵が動くので30fpsとなります。

Premiere Proのシーケンス画面にコマ数を記したもの。FPSを30.0コマに設定したので30コマ目表示終わりでちょうど1秒となる

パラパラ漫画のフレームレート?

最も初期の動画体験といえば「パラパラ漫画」でしょうか。

 

みなさんの中にも教科書の余白に描いていた、又は描いていた人を見たことがあるかもしれません。

パラパラ漫画……1枚1枚凝りに凝って描いたパラパラ漫画も再生は一瞬で終わる

パラパラ漫画の絵が動いて見えるように感じるのは、人間の視覚と脳の錯覚の結果です。パラパラ漫画は、1枚1枚の絵を連続してめくることによって、物語や動きが表現されるのです。

 

パラパラ漫画のフレームレートは10fps~15fpsくらいでしょうか。

 

映画(フィルム)のフレームレート

フィルムを使って製作される一般的な映画は24fpsで、昭和40年代に人気だったホームムービー「8ミリ映画」は18fps(シングル8・スーパー8)でした。映画の創成期(1895年頃)には、リュミエール兄弟のシネマトグラフが16fpsだったそうです。

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これらのフレームレートが決定された理由は、コストパフォーマンスが良かったからです。映画は、なめらかな映像にするためにフレームレートを上げると、フィルムが長くなり、材料費や現像代、フィルムの運搬費用など全てのコストが上昇します。そのため、コストを抑えつつ鑑賞にも耐えるようフレームレートを調整し、24fpsや18fpsとなりました。

 

その後1980年代、映画「2001年宇宙の旅」や「スター・ウォーズ」の特撮を手掛けたダグラス・トランブルが60fpsでの上映を可能とする「ショー・スキャン(Show scan)」を開発、ただし今まで使っていたカメラも映写機も全て買い替える必要があったので、広まりませんでした。(※ショースキャンは後にテーマパークのライド等に使われています)

 

現在でもfpsを上げる試みは繰り返されており、映像機材のデジタル化によって大幅にコストが下がったため様々なフレームレートでの劇場公開が可能になっています。2023年公開の映画『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』では48fpsの上映も実現しています。

 

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※上記の8ミリフィルムはフレームレート18コマ/秒。2022年を撮影したそうですが昭和レトロ感がある不思議……

白黒テレビのフレームレートとチラツキを抑える「インターレース方式」

昭和の時代、ブラウン管テレビは庶民の憧れだった。2005年の映画『ALWAYS 三丁目の夕日』にはお茶の間にテレビが入ってきたときの感動が描かれている

一方、アメリカのNTSCを採用して1953年に始まった日本の白黒テレビは、1秒間に30フレーム(30fps)で動画を再生します。しかし、テレビの受像機の仕組みとして、1フレームを秒間30枚表示するだけでは、画面がチラついてしまいテレビを長時間見るのがつらくなってしまいます。

 

 

この現象は、フェリー・ポーターの法則によるもので、点滅する光点が肉眼では点滅していないように見えるチラつきの限界値を指します。点滅を激しく感じるほど長時間の鑑賞に耐えられなくなります。

 

そのため、秒間のフレーム数をもっと上げる必要がありました。

 

1秒間に30回、オン・オフする懐中電灯を見ていると想像してください。オン・オフするスピードを60回に増やすと、もはや懐中電灯は常に光っているように見えるでしょう。(※お部屋の蛍光灯も実は1秒間に100回~120回点滅しています)

 

ただ、白黒テレビの放送当時、実現可能な放送電波の帯域を使用して、1秒間に30枚以上の絵を送信することができませんでした。そこで、テレビ側で1枚の絵を2枚(AとB)に分割し、30枚を60枚に増やしました。1つのコマを2回ずつ分割表示して、画面の書き換え(リフレッシュレート……単位はヘルツHz)の方は60回に増やしチラツキを見事抑えたのです。

「インターレース方式」
1枚のコマを525本の線にして奇数フィールド(262.5本)0.5秒、偶数フィールド(262.5本)を0.5秒、連続表示。1秒間に合計60回表示してチラツキを抑える方式



この方式を「インターレース方式(飛び越し走査方式)」と呼びます。

 

ちなみに「走査」とは光の点をテレビ画面の左右+上下に超高速で走らせて、画面全体に映像を表示する仕組みのことです。(※ブラウン管テレビの仕組については、こちらの古い動画が詳しいです)

ブラウン管のしくみ:電子銃から出た1本の電子ビームが画面を左右上下に超高速で走る。これを走査という。「ブラウン」は発明者の名前

 

また、インターレース方式に対して1枚の絵を分割せず頭から順次走査する方式の事を「プログレッシブ方式(順次走査方式)」といいます。プログレッシブ方式は、主にデジタル放送で採用されています。

「プログレッシブ方式」は、1秒間に30回画面書き換え、コマ絵も30枚。「インターレース方式」は1秒間に60回画面書き換え(リフレッシュレート60Hz)、ただしコマ絵は30枚のまま。
1コマの絵を2回ずつリフレッシュ表示するのでチラツキが目立たなくなる。

 

※参考※ 実は映画でも、映写機に付いている2枚羽根の回転シャッターを使って同じコマを二度映写し、画面の書き換え(リフレッシュレート)を秒48回にしてチラツキを抑えている。

映写機のランプとフィルムの間には”パックマン”みたいな「シャッター」があり、切り欠きの部分のみ光を通してフィルムの絵を映写する。図は簡略化のため切り欠きが1つだがこれでは激しいチラツキが発生するため、通常は2つ(ダブルフラッシュ)、3つ(トリプルフラッシュ)の切り欠きによって、1枚の絵を2回~3回ずつリフレッシュ表示してリフレッシュレートを上げフリッカーを抑えている

フレームレートとリフレッシュレートの違いとは?

「フレームレート(fps)」と「リフレッシュレート(Hz)」は、どちらも1秒間に何かが書き換わる回数を示す用語ですが、フレームレートは「絵(コマ)」が書き換わる回数を表し、一方、リフレッシュレートは見ている「画面」が書き換わる回数を示します。

 

言い換えると、白黒テレビは、フレームレートが30fpsの動画をリフレッシュレート60Hzで表示しており、フィルム映画はフレームレートが24fpsの動画をリフレッシュレート48Hzの映写機(ダブルフラッシュ仕様の場合)で映写していることになります。

 

どちらも高い数値を持つことで、映像体験がより快適で高品質になりますが、映画やテレビ放送の時代には、現実的には一般のユーザーがこれらの数値を変更することはできませんでした。

 

しかし近年、デジタル技術の進歩によって、240Hzや360Hzの高リフレッシュレートを備えた「ゲーミングモニター」と呼ばれる製品も登場しました。

 

肉眼ではその違いを見分けるのが難しいかもしれませんが、それでも高いリフレッシュレートによって、ゲームをプレイする時に、敵の狙いがつけやすくなったり、素早い動きがよりシャープに見えて勝敗を分けるといいます。

 

PS5をリフレッシュレート60Hzのモニターに繋ぐとどうなる?

ちなみに、例えば120fpsの動画をリフレッシュレート60Hzのモニターで見ると動画は60fpsの動画としてしか視聴することはできません。いくら動画のフレームレート(fps)が速くても、モニターの画面書き換え性能が秒間60回なので120fpsの動画は60fps相当まで下がってしまいます。

 

例としてSONYのゲーム機PS5は120fps対応ですが、PS5をリフレッシュレート60Hzのモニターに繋いでも120fpsでは遊べず、60fps相当まで落ちる……ということです。

 

120fpsのゲーム機の性能をFullに活かすには、リフレッシュレートが120Hz以上に対応したモニターを買いましょう。

PlayStation 5 (CFI-1200A01)PS5

 

 

「29.97fps」はテレビ由来のコマ数