総合診療医ドクターG「ふらついて転んだ」
2017年8月2日(水曜日)放送の『総合診療医ドクターG』は、「ふらついて転んだ。」
諏訪中央病院の山中克郎先生がお年寄りの症状から「単なる老化」で済まされやすい病気(最終診断「ビタミンB12欠乏症」)を発見、老いても再び活気ある生活を取り戻すきっかけを作ってくれた。
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総合診療医ドクターG番組データ
【放送日時】 2017年8月2日(水曜日)よる22時25分(50分)
【放送局】 NHK総合
【番組副題】 「ふらついて転んだ」
【司会・スタジオゲスト】 浅草キッド(玉ちゃん 水道橋博士) 山田五郎 中井美穂
【ドクターG】 山中克郎(諏訪中央病院)
【書記】 麻生芽亜(あそうめあ=諏訪中央病院)
今回のドクターGは「山中克郎」先生
長野県茅野市(ちのし)は八ヶ岳の麓。
山中克郎先生は、愛知県の病院を辞め三年前から茅野市で地域の健康を見守っている。
歩けなくなった老人は5人に1人が亡くなるため、訪問診療をしてリハビリの指導などを積極的に行って本人も気づいていない病気を探り出す。
今回の研修医たち――
- (研修医) 久保田愉史(さとし) … 長野赤十字病院
- (研修医) 田中美喜歩(みきほ) … 淀川キリスト教病院(大阪)
- (研修医) 持丸(もちまる)友昭 … 大原綜合病院(福島)
患者「山根浩二(79歳)」主訴「ふらついて転んだ」
山中克郎先生が訪問診療中、別の老人がマンションの廊下で倒れた。
すぐに駆けつけてその場で診療を開始。
- 頭は痛くない? … ない
- どこか痛む所は? … ない
- めまいはありませんか? … ない
- 腰が痛む? … はい。70歳を過ぎてから時々ある
- いつも足を広げてゆっくり歩く(酔っぱらいのような歩き方)
- お酒は飲んでいない
- 胸に痛みは? … ない
- 耳鳴りは? … ない
- 叩打痛(こうだつう) … 少し痛みあり
- 指鼻指試験 … 正常
- 複視 … なし
- 目の動き … 正常
- 貧血・出血なし
- 発音異常なし
- 聴診 … 異常なし
- 二日前に夜中にふらついて転んだ(頭は打っていない)
- 暗いところでよくふらつく(とにかく暗いところが怖い)
- 大きな病気なし。健康診断に異常なし
- 手足にしびれあり … ビリビリとするしびれ
- トイレが間に合わないことはない
- タバコは1日二箱
- お酒は夜だけ
- 記憶力が弱くなっている(カレンダーの日付を記憶違い)
- 食欲がない
- 三ヶ月くらい前から自宅に引きこもるようになった
- 自分の部屋を間違えることがあった(隣人の話)
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番組で登場した疑いのある病名――
甲状腺機能低下症
(研修医)久保田愉史先生の最初の診断。
甲状腺機能低下症(こうじょうせんきのうていかしょう)とは、甲状腺ホルモンが減り、活力が失われる病気。
高齢者に多く、気分の落ち込み、認知障害、筋力低下のためふらつきや歩行困難となることがある。
飲み薬でホルモンを補えば治療できる。
この症状と合わない点は、体温や血圧、脈拍も普通で低下していない。元気がなくなるという状態ではないこと。
慢性硬膜下血腫
(研修医)田中美喜歩先生の最初の診断。
慢性硬膜下血腫とは、何度も転倒や打撲を繰り返すことで頭蓋骨と脳の間に内出血が貯まって脳を圧迫する病気。
数週間から数ヶ月かけて血腫は大きくなり脳の昨日が低下する。
認知障害、歩行困難、頭痛、吐き気、尿失禁などを起こすことがある。
ただし、(患者)山根さんには尿失禁や頭痛などがないためこの診断は除外された。
ウェルニッケ脳症
(研修医)持丸友昭先生の最初の診断。
ウェルニッケ脳症は、肉や魚、玄米などに含まれる「ビタミンB1」が不足して起きる。
脳幹や小脳の機能が低下して目が無意識に揺れ動く(眼振)や認知障害、歩行困難が起きる。
ただし、(患者)山根さんには眼振などの目の異常がないため診断は除外された。
脊柱菅狭窄症
脊柱菅狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)は脊椎が曲がって内部の神経を圧迫、手足のしびれや腰痛などが出る。特に脊髄の後部にある「後索(こうさく)」と呼ばれる部分が圧迫されるとバランスが取りにくくなりふらつきが出ることもある。
また、”後索”部分では「深部感覚」(=目をつぶっていても自分の手の位置などがわかる)も機能しており深部感覚が機能しない場合はふらつきや転倒などの原因ともなる。
ただし脊柱菅狭窄症で”認知障害”が出ることはないので最終診断からは外された。
ビタミンB12欠乏症
肉や魚に含まれるビタミンB12は、神経伝達に欠かせない物質。
ビタミンB12が欠乏すると、神経の伝達物質である「髄鞘(ずいしょう)」を作れなくなり認知障害やうつ症状、脊髄の後索で発生すれば深部感覚障害によるふらつきが起きる。
こうした欠乏症の種類には――
- 神経梅毒
- 葉酸欠乏症
- 銅欠乏症
などがある。深部感覚の検査では音叉の利用などがある。
VTR2「娘さんの話」
後日、山根さんの娘さんも来院し一緒に症状を聞く。
- 数日前、娘さんが自宅を訪れた時にすべての部屋の電気が点けられていた
- ロンベルグ試験 … 異常あり
- 音叉による振動覚 … 異常あり
- 記憶がおかしい(娘の話)
- 6日前から手足のしびれあり
- しびれは前かがみになっても楽にならない
- 胃の手術を受けたことはない
- 胃の痛みなどもない
- 血液検査に異常なし(各種欠乏症の所見はない)
最終診断結果は「ビタミンB12欠乏症」
萎縮性胃炎
萎縮性胃炎(いしゅくせいいえん)とは、ピロリ菌に長年感染を続けることで胃酸が出なくなる病気。
胃酸が出なくなるとちゃんと食べ物を摂っていても栄養分が吸収できなくなる。
ピロリ菌は高齢者に多く、60歳以上の65%が感染しているとも言われる。(小さい頃井戸水を飲んだなど)
山根さんの症状はここ二、三ヶ月で急激に悪化している。
このような場合は慢性的に症状が長期間続く老化によるものではなく、何か病気が隠れている場合が多いと言う。
ホモシステインの検査を実施
ホモシステインは体内でビタミンB12が消費される時に同時に使われる。もしもホモシステインが体内で大量に残っている場合は、ビタミンB12が足りていない証拠となる。
山根さんのホモシステインは25nmol/mLと基準値の3.7~13.5に比べ大きく上昇している事が解った。
つまり、ビタミンB12欠乏症が確定。
血液検査でビタミンB12が基準値内でもホモシステイン検査によって本当にビタミンB12足りているのかいないのか正確に判定が可能。
ビタミンB12欠乏症は65歳以上の10%~20%(5人に1人)は居る。
山根さんはピロリ菌を除菌し回復した。1年後は趣味の山登りを再開している。
老化のまま放置されているが実は治せる病気が隠れている。患者さんの心の声を真摯に受け止め治療をしてゆきたいと山中克郎先生が語った。
(※2017年8月2日放送)
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次回のドクターGは……
8月23日(水曜日)よる10時25分。心臓手術のエキスパートが登場。
前回のドクターGは…