総合診療医ドクターG「松村Gの”突然ショック状態に”」
2017年7月12日(水曜日)放送のドクターGは、再び番組医療監修の松村理司先生が登場。
過去(2016年7月27日)に放送した「突然ショック状態に(植西憲達医師)」の内容を元にドクターGの本当の凄さを素人にもわかるように解説する特別版。
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ドクターG番組データ
【放送日時】 2017年7月12日(水曜日)よる10時25分(50分)
【放送局】 NHK総合
【番組副題】 松村Gの”突然ショック状態に”
【司会】 浅草キッド(玉ちゃん 水道橋博士)
【スタジオゲスト】 なし (VTR内ゲスト:山田五郎 SHELLY)
【語り】 小野寺一歩 佐竹海莉
【ドクターG】 松村理司(洛和会ヘルスケアシステム総長) (VTR内ドクターG:植西憲達)
VTR再チェック「突然ショック状態に」
過去の放送を浅草キッド、松村理司先生と一緒にVTRチェックした。
(※放送は2016年7月27日(水曜日)ドクターG「植西憲達先生」)
患者は、佐山サトさん(61歳)。
タクシーで来院、かなりだるそうだったためベッドに横たわりながら問診。担当は研修医だった。
問診内容***
- かなりの頭痛
- 筋肉痛のような全身の痛み
- 寒気
- 朝は元気だったが、夕方に倒れる
- 病気の子どもを診ていた(⇒子どもからウイルス感染の恐れあり)
- ――この辺りから本人は辛くて喋ることも出来ない状態になる――
- 頂部硬直なし
- 瞳孔反射異常なし
- 口腔内異常なし
- 経静脈異常なし
- 心音、呼吸音異常なし
- 腹部圧痛なし
- レントゲン異常なし、頭部CT異常なし
- 髄液検査陰性
そして、腹部CTの検査中に突然ショック状態になり検査を中断。
血圧が急激に下がり「せん妄状態(脳への血流が極端に少なくなり意識障害が起きて錯乱する危険な状態)」となった……。
最初に診断に当たった医師(研修医)は「髄膜炎(ずいまくえん=ウイルスが脳を包む髄膜に感染する病気)」を疑い「バンコマイシン・アンピシリン・セフトリアキソン(=沢山の種類のウイルスに効果がある広域の抗生物質)」を投与したが検査により、髄膜炎は否定され、どうして良いか判らずパニックを起こした。
広域抗生物質のデメリットとは?
佐山さんのように、原因となるウイルスが特定できない場合は、より多くのウイルスに効果がある「広域抗生物質」を打つ場合がある。
しかし、広域抗生物質を使えば多くの菌に対して耐性菌(たいせいきん)が生まれてしまい、今後抗生物質の効きが悪くなるというデメリットがあると松村先生。
さらに、広域抗生物質は広域であればある程副作用も強く、正常な「肝臓」や「腎臓」の組織も攻撃してしまう。
広域抗生物質で効果がある細菌の種類。(黄色が効果あり)ドクターGより pic.twitter.com/TR7wEfeJLU
— テレビ番組ブログ (@yonta24blog) 2017年7月18日
膠原病だった場合、治療法が真逆で病気が悪化!
原因菌がわからない状態はとても危険……。
そもそも佐山さんが感染症が原因の病気でなかった場合は抗生物質の投与は大問題となる……。
例えば「膠原病(こうげんびょう=免疫が自分自身を攻撃する病気)」の場合は、抗生物質を打ってしまえば免疫力が上がり自分を攻撃する力がさらにアップして病気は悪化する。
膠原病の場合は「ステロイドパルス療法(=免疫力を下げる)」真逆の治療が必要となる。
原因によって治療法が全く違うためウイルスなのか、自己免疫疾患なのか正確に見極めなければならない。
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なんと患者に脾臓がない事が判明!!
慌てた研修医は、植西憲達先生に指示を仰ぐ。
佐山さんは、かつて脾臓(ひぞう)摘出手術を受けていて脾臓が無かった事が判明する。
再度、傷口などから感染していないか身体をよく見るとお腹に”腹腔鏡手術の傷跡”があった――。(CTでも確認)
脾臓は免疫に関係していて、外からのウイルスなどの攻撃に反応し抵抗する役割を持つ。(※抗体の多くは腸で作られている)
脾臓を摘出すると、肺炎球菌など特定のウイルスに対応する抗体が作られなくなるため免疫システムが働かず細菌が増殖しやすい体に……。
脾臓がない場合に感染しやすくなる代表的なウイルスは……
***
- 髄膜炎菌
- 肺炎球菌
- インフルエンザ桿菌(かんきん)
植西憲達先生は、佐山さんには脾臓がないため、脾臓が防御するはずのウイルスが血液内にいっぱい居るのではないかと考え、遠心分離機にかけ細菌が沢山居る白血球の部分だけを「グラム染色」し顕微鏡を使ってウイルスを直接確認した。
(※通常は血液中の病原菌は少なくグラム染色で原因菌を見ることはないが、佐山さんが脾臓がなく血液に大量に原因菌が流れていると考えらる特殊な場合だったため、血液に肺炎球菌を確認できた)
最終診断「脾臓摘出後の重症肺炎球菌感染症」
肺炎球菌は、誰でも鼻や喉にもっている菌で通常発症しない。
ただしストレスなどで免疫力が低下した場合は、肺炎球菌が増殖する事がある。
佐山さんはペニシリンGを投与し、一命をとりとめた。
脾臓を摘出した人はワクチンの接種が強く推奨されている
脾臓を摘出した人は、肺炎球菌などの菌が血液内に増殖するため、肺炎球菌ワクチンの接種が強く推奨されている。
半分は死亡するという「急性敗血症によるショック状態」を防ぐため心当たりのある人、周りの人にはワクチンを接種したか確認しましょう。
この回の研修医たち
- 清水聡一郎 … (研修医)大阪府 淀川キリスト教病院
- 近藤優美 … (研修医)新潟県 上越総合病院
- 神出学(じんでまなぶ) … (研修医)広島県 呉共済病院(「CT画像で脾臓が無いことに最初に気がついた」)
ガイウス・ユリウス・カエサルの言葉
松村理司先生がガイウス・ユリウス・カエサルの言葉を引用した。
「人間ならば誰にでも、現実のすべてが見えるわけではない。多くの人は、見たいと欲する現実しか見ていない」
病気の診断の場合にもこれは当てはまり、CT画像などで腫瘍を見つけることに懸命になっていると、有るはずのものがない=”大きな臓器である脾臓がない”ことに気がつかない。
やはり”普通の考え(教科書的なパターン)が及ばないことも現場では有り得る”……と言う経験が重要だと、松村理司先生は語った。
(※2017年7月12日(水曜日)放送)
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ドクターG反響ツイート
広域抗生物質のふりかけって
— へたれ薬剤師Kiko讃えられざるシンデレラ (@hetareyakiko) 2017年7月12日
のりたまみたいに#ドクターG
https://twitter.com/re_bbrn/status/885136659708116995
ゴリラあるな〜偶然かな?とか思ったらゴリラだった #ドクターG
— 松竹梅🌗 (@_mttk_Um) 2017年7月12日
脾摘適応はこんなのがあるんだね #ドクターG pic.twitter.com/sZ2tLFmXA2
— 松竹梅🌗 (@_mttk_Um) 2017年7月12日
患者の身体から脾臓が失われているのだから、脾臓が担当する免疫で倒せる細菌が、ショック症状の原因菌として挙げられる。
— たけぽん (@revolvermario) 2017年7月12日
患者の身体を診察したのに各種異常が現れていなかったのは、そもそも免疫自体が働いていなかったからだった。
菌に感染しても、炎症すら「起こせない」・・・
#ドクターG
クリスタルバイオレットつけて洗ってルゴールつけて洗ってアルコールつけて脱色してサフラニンつけて洗って染色終了 前半は液つけて1分置いて洗って、後半は30秒つけて洗うから早ければ五分でいける #ドクターG
— 松竹梅🌗 (@_mttk_Um) 2017年7月12日
しかし、視聴率に媚びて、適当な内容にせず。
— 斗夜 (@toyo_no_page) 2017年7月12日
本当に「教育」を受ける必要がある医療者向けに作られた感が、まさに名前の通り、「NHK『教育』」という感じで、実にいいですね〜、今日のドクターG。#ドクターG #nhk
「多くの人は見たいと欲する現実しか見えていない」 #ドクターG
— 沼田出穂(IPPO) (@mito_chusui) 2017年7月12日
カエサルの「人間ならば誰にでも、現実のすべてが見えるわけではない。 多くの人は、見たいと欲する現実しか見ていない」という名言、日本人だけでなく、世界中の全ての人が陥っていることなんじゃないかな。ネットでやたらと喋っている人たちは、特にそうなんじゃないかな。 #ドクターG
— KITAMUKI_M (@gold_ring) 2017年7月12日
『総合診療医ドクターG』の撮影の合間「老いて、なお花になる~最高齢俳優・織本順吉とその家族」最高齢俳優・織本順吉の日々を3年にわたって密着。 老いと闘いながら生きる姿を撮影者である娘の視点とモノローグで描くセルフドキュメン リー番組も。
— 水道橋博士(a.k.a. 御茶ノ水博士・Netflix版じゃない方の『浅草キッド』実物版 (@s_hakase) 2017年7月16日
https://twitter.com/Ryu54558384/status/886967029504237568
次回のドクターG「ずっと肩が痛い」
次回7月19日(水曜日)よる10時25分「ずっと肩が痛い」。
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