NHKスペシャル「トランプ経済は世界を変えるのか?」
2017年4月2日(日曜日)よる9時に放送の「NHKスペシャル シリーズ マネーワールド」は、トランプ経済が世界に及ぼす影響についての特集。
保護主義や史上最大の公共投資など異例の政策が次々に発表されている。その結果世界のマーケットに多大な影響を及ぼし、日本にも大きな影響を及ぼしている…。
NHKスペシャル マネーワールド番組データ
【放送日時】 2017/04/02(日曜日)よる9時(50分)
【放送局】 NHK総合
【番組副題】 NHKスペシャル シリーズ マネーワールド▽トランプ経済は世界を変えるのか!?
【司会】 爆笑問題
【スタジオゲスト専門家】 安田洋祐(大阪大学准教授・経済学) 武田洋子(エコノミスト) 安達誠司(エコノミスト)
【語り】 渡邊佐和子
トランプ経済で大ダメージ!?
アメリカの元財務長官(クリントン政権)でハーバード大学のローレンス・サマーズ教授。
教授はトランプ政権が世界の破滅を導くと警鐘をならす。
一見景気をよくする政策(雇用創出+景気を2倍に)があるように見えるが、一歩間違えるととてつもないダメージを与えかねないという…。
トランプ政権の目玉政策とは?
トランプ政権が掲げる四つの目玉政策は、以下の通り。
- 史上最大規模の公共投資
- 規制緩和
- 減税
- 保護主義的な貿易
トランプ経済の混ぜこぜ政策?
クリントン政権で経済政策の司令塔だったマーティンベイリー氏(プルッキングス研究所 シニアフェロー)。
トランプ経済はニューディール政策(1929年の世界恐慌の後に行われた)に似ていると言う。
ニューディール政策とはルーズベルト大統領の政策で、公共投資によって雇用を増やし経済を活性化させようというもの。
ジョン・メイナード・ケインズ(1883~1946)のケインズ理論が発想の柱となっている。政府が市場に積極的に介入して経済をコントロールし成功した。
しかし逆の意見もあり、マーティフェルドシュタイン教授(ハーバード大学・レーガン大統領時代の施策プレイン)は、今回のトランプ経済はニューディール政策ではないと真逆の意見。
それはレーガン大統領が打ち出した「レーガノミックス(=ミルトン・フリードマンが提唱した市場の自由に任せる新自由主義)」に基づくもので政府が介入するのは限定的だと主張する。
つまり、ニューディール政策と新自由主義という互いに相反する理論がごちゃまぜになっているのがトランプ経済の現状だ…。
混ぜこぜトランプ経済はこれからどうなるのか?
アメリカの大手調査会社が「これら相反する(ニューディール政策と新自由主義)政策を混ぜて実行した」場合の経済がどうなるのか試算した。
その結果、経済成長率は2017年に3.7%まで急上昇するがその後に急落し2019年にはマイナス2%近くまで落ち込むだろうと言う。
その理由は…
- 公共投資をするには増税が必要
- 増税によってお金が必要なのにトランプ大統領は減税をする
- お金が足りない…
- 国が借金をして穴埋めする
- 借金のため国債を発行する
- 借金が増える
- 国の信頼度が低下する
- 信頼度が落ちた国債は金利が上がらないと買ってもらえないので長期金利が上昇する
- 長期金利の上昇は「住宅ローン」の金利上昇や「企業の借り入れ」金利上昇に影響し市場の消費がダウン
- 景気が悪くなる
つまり、相反する理論が同時に進行することで、お金が必要なのに税金を増やさないという矛盾が発生。このことが後々の景気を悪化させてゆくという。
トランプ経済が「大化け成功」する?
予想に反してトランプ経済が成功するかもしれない…。と提唱するのは、エコノミストの安達誠司さん。
- 公共投資の雇用拡大
- 大型減税で投資の拡大
- 雇用と企業の設備投資によって景気が良くなる
- 景気が加熱して金利が上昇
- 住宅ローンの金利が上がる
- 中央銀行の金融緩和で金利を抑制
- 経済が持ち上がる
逆にトランプ経済は、あぶないと主張するのは武田洋子さん(三菱総合研究所・政策・経済研究センター副センター長・エコノミスト)。その理由は…
- 公共投資で思ったほど雇用が伸びない(完全雇用のため)
- 完全雇用下でインフレが高まる
- 中央銀行の緩和も期待できない
- 長期金利が上昇
- 景気が悪化する
このように、現在の段階では専門家によっても意見は分かれる状況だ。
安田さんは、トランプ大統領が先の見えないごちゃまぜ政策を実行する原因として、経済学者の意見をあまり取り入れようとしないため、過去に起きた様々な経験則を活かすことができないのだろうと語った。
保護主義的な貿易
トランプ大統領は保護主義的な貿易を実行しようとしている。
例えば国境税。
アメリカに入ってくる商品には高い税金の壁を作り、商品が入ってこないようにし、アメリカ産の製品を守ろうとする貿易政策。
これはデビッドリカード(1772ー1823)が提唱した自由貿易の思想から大きくズレている。
自由貿易とは、各国で同じものを作っていたら生産性が低くなるから、それぞれの国で得意なものを作り足りないものは貿易して補い合おう。という考え。
自由貿易の「比較優位の理論」によって各国は得意な製品を作り利益を大きく成長させてきた。
実はこの自由貿易は200年以上続いている。
地球を一つの市場と捉え自由な貿易を活発に行うことで世界は拡大を続けてきた。
そしてなによりその自由貿易の恩恵を受けてきた国が「アメリカ」だ。
アメリカは既に商品の7割が、中国やインドなど他国で生産したものに頼っている。
アメリカのアップル社のiPhoneに至っては、世界27カ国、700社以上の国の部品が集まって出来上がっている。
自由貿易無くしてはアップル社も成り立たない。
コロンビア大学のジャグディシュバグワティ教授は、保護主義が高まれば相手国から反撃をくらい報復合戦が起きると語る。
その根拠として、世界恐慌の時にすべての国が関税率を引き上げ貿易は急激に冷え込み、特にドイツは経済的に追い詰められその結果ドイツではナチスを生んだ。
最終的には世界大戦が勃発している。(また、日本も世界恐慌が戦争のきっかけとされている)
ただしトランプ大統領の保護主義は完璧な保護主義ではなく、アメリカにとってメリットをもたらす保護主義だけをやってゆけば成功するかもしれないと安達誠司さん。
トランプ経済が日本にもたらす影響とは?
トランプ大統領が日本について最も批判するのは、日本に対するアメリカの巨額の貿易赤字(7兆5000億円)だ。
トランプ大統領は、この巨額の赤字の原因が「日本が貿易に有利な円安ドル高誘導にある」と主張している。
かつて1980年代円安ドル高が問題となり、プラザ合意によって「円高ドル安」へと誘導される事になった。
この結果、輸出に頼る企業は潰れ日本は深刻な不況へと進んだ。
これを受けて不況脱出のため安倍首相が日銀の金融緩和を実行、結果的に金余りになった日本は円の価値が下がり「円安ドル高」に方向転換したという過去がある。
もしトランプ大統領が批判を続け、日本の金融緩和を続けられなくなれば、将来日本は大打撃を受けるだろう…。
このため麻生太郎氏をトップとする財務省(浅川雅嗣ほか財務省財務官)は、トランプ政権経済政策のリーダー、ムニューシン財務長官と会談をした。
「日本の金融緩和は”円安ドル高”誘導ではなく国内の景気のため」と説明。浅川氏はできるだけ為替が急激に変化しないようにしたいと語った。
日本のメーカーへの影響は?
一方、日本の企業への影響はどうだろうか?
住友理工はエンジン部品を作る自動車部品メーカー。
これまではアメリカに工場を建設してきたが、もし国境税が導入されれば今の生産体制は全て見直しの必要がある。
国境税の影響を刻一刻と判断しつつ、投資をしてゆきたいと西村義明会長。
またすでに米国の公共投資を見込んで列車用のパーツなども開発中。
日本はこうしたインフラ投資にとても便利な部品を作るのが得意なのでピンチをチャンスに変える必要もある。
根強いアメリカ製造業復活への期待
アメリカオハイオ州などの製造業に従事する人々は、今もトランプ大統領に大きな復活の希望を持っている。
しかし、とても大きな期待をうけて当選したトランプ大統領だが、オバマケアの廃止取りやめなどその期待に答えられないのではないか?という世間の声も出始めた。
トランプ経済は、資本主義をどこへ導こうとしているのか?
これからの経済を見極め、様々な状態にうまく対処できるように今から複数の対策を用意する必要がありそうだ。
NHKスペシャルマネーワールド反響ツイート
https://twitter.com/Grell2nd/status/848506785342173185
Nスペ、マネーワールド。なかなか秀逸。
— MRN🐬🌹💃🥂 (@Merlin_wand) 2017年4月2日
NHKの番組マネーワールドのアートディレクターはなかなか良い仕事をしていると思います。
— 三反栄治 (@EijiSantan) 2017年4月2日
あれ?長期金利が重要なポイントで、中央銀行も出てきたのに、そこは掘り下げないで、保護主義の話へ移ってしまった。 #マネーワールド
— kokiya (@kokiya) 2017年4月2日
ここからは、4つのトランプ政策の中でも、特に「保護的な貿易政策」に焦点をあてて深堀していきます。 #マネーワールド
— 安田 洋祐 (@yagena) 2017年4月2日
トッド氏の主張は破天荒に聞こえますが、細かい人口動態から背後にある経済動向を読み取ろうとするアプローチは示唆に富んでいる気がします。経済学者は大嫌いみたいですけれど…(過去の対談でご本人から直接言われましたw) #マネーワールド
— 安田 洋祐 (@yagena) 2017年4月2日
やはり「メリッツ・モデル」のくだりはカットされてしまったか~>< 日本企業の持つ(諸外国企業と比較した)直接投資の優位性の話はぜひ盛り込んで欲しかったのですが、まあ仕方無い… #マネーワールド
— 安田 洋祐 (@yagena) 2017年4月2日
<マネーワールド>面白かったが、歴史に学ばぬ者は報復を受けると指摘した経済学者が居たが、歴史を教訓とすべきは常に一部だ。又リカード、ケインズ、フリードマン等経済理論実践ブレーンを官僚的に信頼して履行してきたメソッド自体が終焉しつつある事だ。もっと言えばインテリ主導型崩壊時代だ。
— Jun San West, Author, Novelist, Poet thinker (@olivlove) 2017年4月2日
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