総合診療医ドクターG「肝膿瘍と大腸がん」
2016年9月28日(水曜日)夜10時24分ごろより(NHK総合)にて放送された「総合診療医ドクターG」は、肝膿瘍から発見された大腸がんだった。
大腸がんになり、そこから出てきたクレブシエラ(腸内細菌)が門脈を通って肝臓に到達。肝臓に肝膿瘍を作り、意識障害が起きて倒れた。
【スポンサーリンク】
総合診療医ドクターG番組データ
【放送日時】 2016年9月28日(水曜日)よる10時24分頃(50分)
【放送局】 NHK総合(NHKG)
【ナビゲーター】 浅草キッド(玉ちゃん 水道橋博士) 山口もえ やくみつる
今回の症例を解決したドクターGは…
茨城県水戸協同病院の矢野晴美先生が今回のドクターG。
矢野晴美先生は、目に見えない病原体などを専門にする「感染症内科医」で感染症のスペシャリスト。
感染した病原体だけでなくルートを突き止め再発を防ぐ徹底した原因究明が求められる現場で戦っている。
今回の研修医たち
今回登場した研修医たちは以下の通り。
- 工藤拓也 … 兵庫県 神戸大学医学部附属病院(研修医)
- 椎野明日実 … 長野県 佐久総合病院(研修医)
- 田邉翔 … 東京都 国立国際医療研究センター病院(研修医)
篠井和臣さん(仮名)の再現ドラマ(1)
篠井和臣さん(仮名・63歳)は、屋外での農作業中に倒れた。
意識がもうろうとして呼びかけに答えない。
- 意識がもうろうとしていて本人は問診できない
- 目は開いている
- 頂部硬直なし(首が硬くない)
- 髄膜炎(ウイルスなどで脳を保護する髄膜に炎症が起きる病気)を想定して検査と処置をした。
- 心音・心電図異常なし
- 頭部CT異常なし
- 4日前からだるさがあった
- 3日前から38度4分(倒れた時39度以上)
- 悪寒や震えがあった
- 田んぼで除草作業の最中に倒れる
- 野生動物との接触はなし
- 旅行に行っていない
- 今まで大きな手術はなし
- 高血圧の薬を飲む
- 尿が出にくいといったことはなし
- 夜トイレにいくことはない
- 体重は変化なし
- 心音異常なし
- (触診にて)肝臓がわずかに触知
- (触診にて)脾臓(ひぞう)異常なし
- 髄液検査は陰性で、髄膜炎の可能性は低い
- 腹部CTで影がある
【スポンサーリンク】
カンファレンス(症例検討会)スタート!
再現ドラマはここまで、研修医たちがそれぞれ一番最初の診断結果を書いた。
劇症肝炎とは?
- (研修医)工藤拓也先生 … 劇症肝炎
劇症肝炎とは、肝炎が急激に重症化し肝機能が著しく低下して、肝細胞が大量に壊され肝臓でろかされるはずだった毒素が全身にまわって、意識障害、黄だん、倦怠感、発熱が起こる。
昏睡状態になると死に至ることもある。
【この病気の可能性は無し】今回は、腹部CTの画像で影が映っていたことから劇症肝炎の可能性は消えた。劇症肝炎であればこのような影は出来ないのが理由
肝膿瘍とは?
- (研修医)椎野明日実先生 … 肝膿瘍(かんのうよう)
- (研修医)田邉翔先生 … 肝膿瘍(かんのうよう)
肝膿瘍とは、細菌や寄生虫に感染して肝臓に膿がたまる病気のこと。
肝臓に侵入したウイルスなどが白血球と戦ったあと、それらの死骸が膿の塊になって残る。この残骸は膿の塊(肝膿瘍)となって、「悪寒・倦怠感・発熱」など風邪によく似た全身症状が現れる。重症化すると意識障害が起き命に関わる。
篠井和臣さん(仮名)の再現ドラマ(2)
さらにドラマが続く。
篠井和臣さんの腹部CT画像には、肝臓に複数(合計3つ)の黒い影が映っていた。
また、肝臓の異常を示す血液検査の結果も知らされた。
肝細胞癌とは?
田邉翔先生(研修医)が肝臓のCT画像の影を見て発言。肝細胞癌とは、肝炎ウイルスの感染などで起きる肝臓の悪性腫瘍のこと。
腫瘍が大きくなると、激しい腹痛や意識障害が起き命が危険な状態になる。
寄生虫について考えてみる
二人の研修医があげていた「肝膿瘍」についてさらに掘り下げて考えることに。
肝膿瘍は、以下のような寄生虫が原因で発生することがある。
- エキノコックス …キツネの糞に含まれる幼虫が人間の体内に入って膿瘍を作る。キツネやイヌの糞に注意
- 肝てつ … 農作業での水草などについていて、誤って人の体内に入る場合がある。(てつ)はヒルのこと。肝臓に住み着いて膿瘍を作る
細菌について考えてみる
細菌でも肝膿瘍を作る。黄色ブドウ球菌や結核の外部からのものの他、体内の腸管内のクレブシエラ、大腸菌でも肝膿瘍を作る。
篠井和臣さん(仮名)の再現ドラマ(3)
再現ドラマの続き。
- 農作業中に擦り傷やケガをすることはあったが傷口が膿むことはない
- 外での食事は?田んぼの畦道で食べた。手はペットボトルからの水で洗っていた
- 全身に傷口は見当たらない
- (翌日意識が戻る)
- 来院半年前から熱っぽかったり寒気はあった。風邪薬や解熱剤を飲んでいた
- 血液培養の検体をグラム染色してみると菌(腸内細菌:クレブシエラ)が住み着いていた(血液中に腸内細菌が見つかるのはそれだけで大変な異常事態)
腸内細菌とは?
腸内細菌は、腸の中で食べ物の消化を助ける働きをしている。クレブシエラなどは腸内では普通にいるが、腸の外に出ることはない。
しかし、何らかの原因で血液中に腸内細菌が入ってゆくと全身にまわり異常をきたす。篠井和臣さんの場合、肝臓に到着して肝膿瘍になった。
糞線虫症とは?
研修医、工藤拓也さんが「糞線虫症」を挙げた。糞線虫とは皮膚から侵入し卵を生み増えて腸管を食い破ってしまうと、そこから腸内細菌が血液に侵入し門脈を通って肝臓に運ばれることがある。糞線虫は、奄美大島や沖縄に生息している。(場所が関東なので糞線虫などの寄生虫の可能性は消えた)
感染性心内膜炎とは?
研修医、田邉さんの二つ目の診断。感染性心内膜炎とは、細菌が心臓内で増殖し、幕屋弁に炎症を起こす病気のこと。
歯茎からの出血や、抜歯などにより口の中の細菌が血液に入り心臓へ到達して感染性心内膜炎となることもある。
徐々に症状が起きる。
肝膿瘍を作る3つの経路 細菌はどこから来たか?
肝臓には、胆管、門脈(血管)、冠動脈(血管)の3つの経路がある。
クレブシエラが、胆管から肝臓にやって来たなら、胆のうに異常あり。
冠動脈からなら、心臓に異常あり。
門脈なら、消化管に異常があるということになる。いったいどの経路でクレブシエラは肝臓に到達して肝膿瘍を作ったのか?
もう一度腹部CTで見ると、心臓、胆管、消化管に大きな異常は見えなかった。
篠井和臣さん(仮名)の再現ドラマ(4)
ドラマの続き。意識を取り戻した、篠井和臣さんに引き続き問診をする。
- 胸が苦しくなることは?…息切れする
- 食欲はある
- 腹痛はなし
- 吐き気、嘔吐なし
- 便に血がまじることはない
- 脂っこい食事はしていない(野菜中心)
- 心臓のエコーに異常なし
クレブシエラは、心臓に問題がないので心臓からやって来たとは考えられない。さらに胆管にも問題は無かった。
最終診断「大腸ポリープによる多発性肝膿瘍」
最後に残ったのは「門脈」からやっきたクレブシエラだった。
もしも大腸に病変があればそこから腸が傷ついてクレブシエラが腸の外に出たと考えられるため、篠井和臣さんは大腸カメラの検査を受けた。
大腸カメラを入れると、大腸にポリープなどが3箇所発見された。
最終診断は「大腸ポリープによる多発性肝膿瘍」となる。
篠井和臣さんは、「早期の大腸がん」と判明した。
クレブシエラを完全に処置したあと、大腸がんの手術をしがんを取り除いた。篠井和臣さんは再発もなく暮らしている。
最終診断のまとめ
- 大腸がんから腸内のクレブシエラが門脈の血流に乗って肝臓へ
- 肝臓でクレブシエラが肝膿瘍を作る
- 肝膿瘍によって、熱っぽいなど風邪の症状が起こる
- 肝膿瘍によって、意識障害発生
- 農作業中に倒れる
- 救急車で病院へ
【スポンサーリンク】
ドクターG反響ツイート
次回のドクターGは…
次回の総合診療医ドクターGは、10月5日(水)よる10時25分から。ダンスを踊る女子高生の「頭が痛くてだるい」。
当ブログのドクターG関連記事…
ドクターG関連グッズ