チョイス@病気になったとき「肝臓病」
2016年10月15日(土曜日)よる8時からNHK Eテレにて放送された「チョイス@病気になったとき」は、肝臓の病気について。
「沈黙の臓器、肝臓」。病気になってもほとんど自覚症状が出ないことでも有名。しかし放置しておけば確実に悪化して、脂肪肝、肝炎、肝硬変、肝臓がんへと進行してゆく。脂肪肝の段階で確実に治療するのが最重要だという。今回は、肝臓を守るためのチョイスを紹介。
チョイス@病気になったとき番組データ
【放送日時】 2016年10月15日(土曜日)よる8時(45分)
【放送局】 NHK Eテレ
【番組副題】 検査で分かる肝臓の病気
【司会】 八嶋智人 大和田美帆
【チョイスコンシェルジュ】 新井秀和(アナウンサー)
【スタジオゲスト医師】 泉並木(武蔵野赤十字病院 院長)
【語り】 佐藤真由美
肝臓の概要とは?
成人男性の肝臓の大きさは体重の50分の1程度でおよそ1.2キログラム。体積は人体で最も大きい臓器だ。
役割は、人体の化学工場として、代謝や解毒を行うこと。
ただし病気になった時に”症状が出にくい”という特徴があり、肝臓の検査はとても重要だと言う。
76歳建設業の男性の場合
76歳、建設業の男性。(伊藤さん・仮名)。
伊藤さんは、32歳の時に母親を肝臓がんによりなくしている。お母さんが亡くなったのは66歳。お母さんは日本酒が大好きでグイグイ飲んでいたという。
そのため、日本酒を避けていた伊藤さん、そのかわりにビールを多い日には10本も飲んでいた。
そんな伊藤さんに肝臓の異常が見つかったのは60歳。
血液検査でガンマGTPの値が471を示した。(基準値が73以下)
ガンマGTP値の意味とは?
血液検査で登場する「γGTP」は、血中に含まれるガンマGTPの量のこと。
肝臓の幹細胞にアルコールが入ってくると、アルコール分解酵素がアルコールを分解して「ガンマGTP」に変化させる。
入ってくるアルコールが多いと分解されたガンマGTPも多くなりそれだけ血中に流れで来る量も多くなるという。(お酒を飲み続けると数値が高くなる)
脂肪肝とはどんな状態か?
伊藤さんは、最初に血液検査で異常があった三十代の頃すでに「脂肪肝」であったと考えられる…。
肝臓は、「解毒」と「代謝」を主に行っていて、解毒はアルコールを無毒化し、代謝は、食事からの糖や脂肪を中性脂肪として肝臓の外に出して溜め込んでいる。
ところがアルコールが大量に入ってくると肝臓はアルコールの分解を優先するため、脂肪や糖を代謝せず肝臓に溜め込んだままになる。これを「アルコール性脂肪肝」という。
伊藤さんは、最初に脂肪肝と言われたころから7年間、ガンマGTPの値が500付近を行ったり来たりする横ばい状態だったため、ガンマGTPが高くなりやすい体質によるものだろうと考えていた。
しかし、9年後の2008年、横ばいだったガンマGTPの値が急激に上昇した。
流石におかしいと思った伊藤さん、肝臓の精密検査をチョイス。
なんと伊藤さんの肝臓から3cmのがんが見つかった。
伊藤さんの肝臓で何が起きたのか?
お母さんが肝臓がんでなくなったため、日本酒は飲まなかった伊藤さん。
しかし、同じアルコールであるビールは良いと思い1日20本も飲み続ける生活をする。
やがて30代で「脂肪肝」を発症。
それでもお酒を飲み続けたため、肝臓にたまった脂肪が炎症を起こし「肝炎」に進行。
さらに飲酒を続けた結果、炎症を起こした肝細胞が萎縮を始め固くなり「肝硬変」になった。
そして、肝硬変の一部はガンに変化し「肝臓がん」となる。
伊藤さんは幸い癌になって間がなかったため早期に治療し今は元気に暮らしている。
それ以来一滴のお酒も飲まず、毎日散歩して運動する暮らしがありがたいと感じていると言う。
肝臓に関係する血液検査項目とは?
血液検査で肝臓に関連する項目は以下の通り。
- ALT(GPT)… 幹細胞に含まれる酵素 … 肝細胞がアルコールなどで壊れると血液中にALTが漏れ出てくる
- AST(GOT)… 幹細胞に含まれる酵素 … 肝細胞が壊れると血液中に漏れ出てくる
- γGTP… 幹細胞に含まれる酵素
- ALT… 幹細胞に含まれる酵素
- 総たんぱく … 肝臓で作られるたんぱく
- 総ビリルビン … 肝臓の働きに関わる物質
- アルブミン … 肝臓だけ作られるたんぱく
- コリンエステラーゼ… 幹細胞に含まれる酵素
- 総コレステロール … 肝臓の働きに関わる物質
- 血小板 … 肝臓の働きに関わる物質
幹細胞に含まれる酵素は、肝機能に異常があると血液中に流れ出て数値が高くなる。
アルブミンや総たんぱくは、肝臓で作られる蛋白で肝機能が低下すると量が減る。
総ビリルビン、総コレステロール、血小板も肝臓の働きに関わっている。
特に重要なのは、「ALT」「AST」「ガンマGTP」となる。
ALT、ASTと肝臓病の関係
ALTとASTが血液中に漏れ出てくる量によって肝臓の病気の種類がわかると言う。
- 健康な肝臓 … ALT < AST(どちらも基準値以下)
- 脂肪肝 … ALT > AST(~100)
- 慢性肝炎 … ALT > AST(31~500)
- 肝硬変 … ALT < AST(~100)
- 肝臓がん … ALT ~ AST(両方上がったり、片方だけ上がったりする)
ガンマGTPなどは1週間飲酒しなければ正常値に戻ってくるため、いつもの生活において血液検査の数値がどうなっているかを調べたいのであれば、血液検査だからといって禁酒をするのは良くない。
また、1年間程度禁酒すれば肝臓はもとに戻ることがわかっている。
お酒の適量とは?(1日)
お酒には、適量がある。(厚生労働省「健康日本21」より)
- ビール … 中瓶1本
- 日本酒 … 1合
- ワイン … 4分の1本
- 焼酎 … 0.6合
- ウイスキー … ダブル1杯
これは、お酒によって将来肝臓が悪くならない「安全域」を示した表。「過剰飲酒」とはこの表の3倍以上を5年間毎日飲んでいる人のことを言う。
お酒の飲み方について
お酒は、「休肝日を作って飲むのが良い」という。
これは肝臓がアルコールを処理する時間に24時間かかるため。もしも毎日アルコールを飲んでいると24時間の処理を肝臓が毎日続ける必要がある。
そのため肝臓には1時間も休む時間がない。
肝臓には、休肝日を設けて肝臓の処理をなくし肝臓が完全に休める「休肝日」を設ける必要がある。
週に2日くらいの休肝日を設けたい。
まとめると、「適量を守る」「週に2日は休肝日を」「年に1回は血液検査でチェック」
肝臓の精密検査について
肝臓の精密検査にはエコー検査などがある。エコー検査では肝臓の脂肪の状態を色の濃さで判定することが出来る。
「MRエラスト」では、肝臓の硬さを計測できる。肝硬変があると肝臓に硬い部分が出来る。
脂肪肝の段階で運動や食事療法をすることが大切。
お酒を飲まないのに脂肪肝!?
主婦の鈴木さん。4年前肝臓に異常が見つかった。
ASTとALTが3桁に!!所がお酒も1滴も飲まない鈴木さん。なぜ脂肪肝に?
通常食事から摂った脂肪は肝臓でエネルギー源に作り変えられ全身に送り出される。しかし、カロリーオーバーの食生活をしている人は、他の臓器の表面に脂肪(内臓脂肪)
が貯まる。溜まった脂肪が常に肝臓に送り込まれるため肝臓がエネルギー源に作り変えられなかった分の脂肪は肝臓に溜まり続けてしまう。
そうしてやがて脂肪肝になるという。
解決法は、運動をして脂肪の代謝を良くすること。鈴木さんは運動不足と間食を続けた結果「慢性肝炎」になってしまった。
こうしたお酒を飲まないのに脂肪肝になってしまう人を「非アルコール性脂肪性肝炎(ナッシュ)」と呼ぶ。
武蔵野赤十字病院消化器科の、小宮山泰之さんは、ナッシュでもウイルス性の肝炎と変わらない状況で発がんのリスクがある。
ナッシュになった鈴木さんは、近所のジムに週3日、1回30分通っている。体重も落ち始めたと言う。
ナッシュそのものを治す薬はなく、食事と運動が重要。
ナッシュの場合は血液検査で…
- ASTとASTの比が高い
- 血小板が低い … 肝臓が線維化して固くなってくると血小板が低くなる
- 肝線維化マーカーが高い … (ヒアルロン酸など)
という特徴があると言う。血液検査だけでは、単純な脂肪肝かナッシュ(炎症まで起きているか)がわからない。そこで腹腔鏡で見ながら針で肝臓の一部を取り出して詳しく調べる「肝生検」を行うことがある。
脂肪肝の人の1割から2割がナッシュになると言われている。ナッシュと診断された人は、放置すると6年から7年で肝硬変に…さらに2割から3割が肝臓がんになるという。
運動は大切だが、急激なダイエットは肝臓にダメージを与えるため、目安としては1ヶ月に1キロから2キロゆっくりと痩せるようにする。また、食事と運動をどちらも行って偏らないダイエットが重要。
もともと痩せているひとは脂肪肝になることはあまりない。
ウイルス性肝炎について
一般の血液検査には、肝炎ウイルス検査は入っていない。
そのため、病院や保健所などで専門の「肝炎ウイルス検査」を別に受ける必要がある。無料で受けられる自治体もある。
チョイス反響ツイート
NHK Eテレ 10/21 12:00 チョイス@病気になったとき「検査で分かる肝臓の病気」 #nhketv https://t.co/F936yPE4I1
— NHK Eテレ(教育テレビ) (@NHK_ETV) 2016年10月21日
https://twitter.com/Rfssica_tv/status/789300183141978112
なう。
— のさか (@nosaka_s16) 2016年10月21日
[再]チョイス@病気になったとき「検査で分かる肝臓の病気」[文]
NHKEテレ岡山 2016/10/21 12:00 - 12:45
お酒を飲まない人でも、脂肪肝から「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」、さらに肝硬変・肝臓がんへと進行することもある。検査値を元に...
次回の「チョイス@病気になったとき」は…
次回は、盲腸(急性虫垂炎)について。早期発見と治療のチョイスを紹介。土曜日夜8時から放送。
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